「クリスマスの前に。」
( マジンガーZより )
※注意 | このお話は、namiが『マジンガーZ』を基に、趣味で妄想&創作したものです。 本編の設定とは異なる部分が多々ありますので、ご了承ください。 |
ラウンジで一人休憩をとっている甲児。
コーヒーを片手に、窓の外を見入っている。
なにやら柄にもなく、物思いにふけっている様子である。
外はしんしんと冷えているが、光子力研究所の中は暖房が効いていて春のように暖かい。
もっとも今の甲児の心境は春そのものだ。なぜって?
もうすぐ正月だな。いや、その前にクリスマスが来るか。
そして、クリスマスの日は、俺たちの結婚式の日でもある。
“俺たち”っていうのはもちろん、俺とさやかさんの結婚式さ。
おっと、いけねえ。さやか“さん”じゃなかったぜ。さやかだ。
どうも昔から、さやかさんって呼びなれてるから、つい癖が出ちまう。
もっとも、俺のお育ちがいいもんだから、すべての女性に、“さん”を付けちまうんだが。
この結婚には障害っていう障害はなく、順調ってわけじゃなかったけど、ま、収まるべきものに収まったって感じで、とにかく順調に進んだ。
結構遠回りしたけどな。
お互いが、素直になれねえ性分だから、それも仕方ないことで。そのあたりが、順調ってわけじゃなかったっていう理由だ。
1番難儀だったのは、どちらの姓にするかって問題だったな。
さやかさん、、、、じゃねえ、さやかは一人娘だし、俺も兜家の長子だ。
どっちも自分の姓を名乗りたいところだ。
さやかは意外にも、「甲児くんの奥さんになるんだから、兜さやかでいいわよ。」な〜んて奥ゆかしいことを言ってくれたりしたが、弓教授の手前、それはまずいだろう。
だからと言って、俺がすんなり、弓甲児になるのも、なんだしなあ。
両方が高名な博士を父や祖父に持ったのが運のつきだ。
たぶん、俺たちの子供たちも、何かしらの博士になるんだろうな。
・・・ととっ、そんな妄想は置いておいて、だ。
この際、俺は、弟のシローに頭を下げることにした。
シローに弓家の養子に入ってもらって、さやかは俺の姓になるんだ。
シローも大きくなったせいか、意外にすんなりと承諾してくれた。
将来俺たちの子が、弓の姓を名乗りたいと言えば、そうしてくれればいいし、もしそうなったら、シローもそれまでの辛抱だしな。
だけど、シローは「別に一生弓のまんまでもいいよ。」なんて言っている。
「これで俺もやっと【長男】だ。一応、兄貴はさやかさんの夫になるんだから【お兄さん】って呼ばせてもらうけど、世間じゃ対等だぜ。」
はあ?おまえってば、そんなに【弟】がいやだったわけ?
「あったりまえだろ?いっつも兄貴に抑え込まれてさ、いいカッコするのは兄貴だったじゃないか。」
そんなもんかねえ。
俺には俺の、長男としての苦労もあったんだが、二男には二男の苦労もあるらしい。
そんなこんなで、新居はここ、光子力研究所のままだし、、、、俺とさやかは結婚しても変わり映えのない生活になるかな。
今はそれぞれに部屋を持ってるから、共同のダイニングでも増設して、通い婚になるか?
あー、でも寝室は1つにしねえとな。
夫婦になるんだから、あたりまえだぜ。(にやにや)
「ちょっと甲児くん!」
突然背中から声をかけられて、甲児は飛び上がらんばかりに驚いた。
「さ、さ、さやかさん!・・・じゃねえ、さやか・・・。」
「何あわててんのよ。私との挙式が近いからって、うかれすぎないでよね。」
「な、な、何もうかれてなんかいねえぜ。」
「そお?この前のレポートだって入力ミスが多いし、だいたいが提出期限を忘れるなんてだめじゃない?
今でもほら、一人でにやけちゃって。私、ずーっと見てたんだから。」
(げげっ!?)
「いやいや、その、ほら、なんだ。さやかのさ、ウェディング姿を想像しちまっててさ、早く見たいな〜なーんて、あははっ。」
頭をかきつつ、甲児はなんとかとりつくろった。
「え?私のウェディング姿、楽しみにしてくれてるの?」
「ああ、ああ。もちろんさ!」
「いやん、甲児くんったら。」
頬をぽっと赤らめるさやかを見て、甲児は安堵のため息をついた。もちろん、さやかにはわからないようにだ。
「でもお、仕事中はそんなこと考えてたらだめよ。」
甲児の言葉に喜んださやかだが、しっかり釘をさすのも忘れていない。
「はいはい、わかったぜ。」
「“はい”はひとつ!」
甲児はさやかのあいかわらずの態度に苦笑した。
結局は何も変わらないような二人の関係(さやか優位)だが、甲児のほうは少しだけ、喧嘩を回避できる技を身につけたらしい。
甲児はさやかの肩にそっと手を置くと、二人並んでラウンジを出て行った。
外は雪。
甲児とさやかの結婚式は、ホワイトクリスマスになりそうだ。
END
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